高校生のための英文法:名詞と冠詞

第13節 〈同格〉

〈名詞〉や〈名詞相当語句〉を連続して並べることで、〈同格〉(apposition)になる。〈同格〉は、後にくる〈名詞(句)〉が、前の〈名詞(句)〉を補足的に説明するもので、「後の〈名詞〉が前の〈名詞〉と同じ格」という意味である。

13-1: 〈名詞+名詞〉

  • Baseball, his favorite sport, has brought him a lot of good friends.(一番好きな野球のおかげで、彼にはたくさんの親友ができた。)

この文の主語(主格)であるbaseballは〈名詞〉であり、それだけで主語になることができる。his favorite sportは〈名詞句〉であり、ここではbaseballのことを説明している。読解のうえでは、「野球、っていうのは彼の一番好きなスポーツなんだけど、それが……」と理解していくとよいだろう。

次の3つの文の違いに注意したい:

  1. My sister, Alice, likes jelly beans.(ぼくの妹は、アリスっていうんだけど、ジェリービーンズが好きだ。)
  2. Alice, my sister, likes jelly beans.(アリスは、ぼくの妹なんだけど、ジェリービーンズが好きだ。)
  3. My sister Alice likes jelly beans.(ぼくの妹アリスは、ジェリービーンズが好きだ。)

例文1の書き方をすれば、「ぼくの妹」は1人しかいない、ということが含意される(声に出して話すときは例文3と区別がつかないが)。

13-2: 〈代名詞+名詞〉

  1. We, the players, promise to do our best in the game.(我々選手一同は、全力を尽くして試合をすることを誓います。)
  2. We Japanese were poor in those days.(我々日本人は、当時、貧しかった。)

なお、"we Japanese"(私たち日本人)という表現は排他的な印象を与えるため避けるべきである。

13-3: 〈名詞+名詞節〉

  • He heard the news that his team had won.(彼は彼のチームが勝ったという知らせを聞いた。)

thatやwhetherに導かれる〈名詞節〉が、その直前の〈名詞〉と〈同格〉の関係になっている。これは次のような文との違いに注意したい:

  • He heard that his team had won.(彼は彼のチームが勝ったと聞いた。)

こちらでは、that節がheardの目的語になっており、〈同格〉ではなく〈目的格〉として機能している。

また、〈関係代名詞〉のthatではないことにも注意。

13-4: 〈文+名詞〉

  1. Sam is driving a Porsche -- the talk of this village.(サムはポルシェを乗り回している――この村ではその話で持ちきりだ。)
  2. He married money -- the fastest way to become rich himself.(彼は金持ちの人と結婚した。自分も金持ちになるもっとも早い道だったのだ。)

〈名詞〉が先行する文の内容を要約説明していると考えてよい。

13-5: 〈名詞+of+名詞〉

「〈同格〉のof」と呼ばれる。

13-5-1: 「~という」

  1. She lives in the city of Rome. (彼女はローマという都市に住んでいる。)
  2. The White House responded to the news of the launches with caution and relative calm.(ホワイトハウスは、発射のニュースに注意深く、かつ比較的冷静に反応しました。)

この「~という」という意味のofの使用法は、

  1. the fact that you met him(あなたが彼に会ったという事実)
  2. the fact of your meeting him(あなたが彼に会ったという事実)

この2文がほぼ等価であることを考えればわかりやすい。1文めは13-3〈名詞+名詞節〉の〈同格〉であり(thatは〈名詞節〉を導く〈接続詞〉)、2文めのmeetingは〈動名詞〉で、〈動名詞〉の意味上の主語がyourである。

13-5-2: 「~のような」

  1. She is an angel of a girl.(彼女は天使みたいな女の子だ。)
  2. I've stayed in this jewel of an island for about half a year.(ぼくはこの宝石のような島に、半年ぐらい滞在している。)

この形は感情が込められた表現で、〈a+名詞+of〉が〈形容詞〉のような働きをしている(aはthisやthatなどに変わりうる)。

一般に、〈A+of+B〉は〈B+that is like+A〉であると説明できる。1文めは

  • She is a girl that is like an angel.

と言い換えられるし、2文めは

  • I've stayed in this island that is like a jewel for about half a year.

と言い換えられる。

13-6: 〈前置詞〉ofの注意点

英語の〈前置詞〉ofと、日本語の格助詞「の」は、一対一対応ではない。

まず、英和辞典で〈前置詞〉ofの意味を確認しておいてほしい。所有や所属の「~の」という意味は、そのうちの1つでしかない。the island of Hong Kongを「香港の島」と訳してしまったら誤訳である(香港という島の他に香港が所有している、特定のいずれかの島を意味することになってしまう)。ofにかぎらず、〈前置詞〉はすべての意味が重要である。辞書に掲載されているすべての用法が問われる。

日本語の格助詞「の」にも様々な意味があるが、ofと関連付けてしまう「の」の用法は「その文節を連体修飾語にする」という用法だろう。「成功の条件」といえば「条件」(という体言)を「成功の」という文節(連体修飾語)が修飾している。これはsuccess's conditionsやconditions of successでもなく、conditions for successである(成功のためにそろわなければならない条件)。「安静時の痛み」はrest's painでもpain of restでもなくpain during restである。

日本語で「の」というときに、どの文節とどの文節が、どのような関係になっているかを考える必要がある。つまり、日本語文法の能力が、英語にかぎらず、外国語を学習するにあたって必須の条件になってくるということだ。