高校生のための英文法:名詞と冠詞

第17節 〈冠詞〉の位置と省略

17-1: 〈冠詞〉の位置

17-1-1: 〈冠詞〉のふつうの位置

〈冠詞〉はすべての〈形容詞〉の前に位置する。〈形容詞〉を修飾する〈副詞〉があるときは、〈冠詞+副詞+形容詞+名詞〉の語順になる。

  1. He is a very tall old man.(彼は非常に背の高い老人だ。)
  2. This is a very expensive coat.(これは非常に高価なコートだ。)
  3. You gave me the very best advice.(あなたは最高の助言をしてくれた。)

17-1-2: 〈冠詞〉が〈形容詞〉や〈副詞〉の後に位置するばあい

「ふつう」とは異なる語順になるタイプを分類するが、どれも見慣れたものだと思う。シンプルに:

  1. such
  2. so, as, too
  3. all

の3タイプを考えておけばよいだろう。

17-1-2-1: 〈such a[an]+形容詞+名詞〉型(such, what, half)

  1. I have never seen such a big group of pepple dancing.(こんなに大勢の人たちが踊っているのを見たことがない。)
  2. What an interesting picture this is!(これはなんておもしろい絵なんでしょう!)
  3. The nearest train station is about half a mile away from the hotel.(最寄りの鉄道の駅は、そのホテルから約半マイルのところにある。)

halfはこのタイプに属すが、次の言い方もふつうである:

  • The nearest train station is about a half mile away from the hotel.(最寄りの鉄道の駅は、そのホテルから約半マイルのところにある。)

17-1-2-2: 〈rather a[an]+形容詞+名詞〉型(rather, quite)

ratherは〈a rather+形容詞+名詞〉がふつうだが、くだけた言い方では〈rather a[an]+形容詞+名詞〉になることもある。

  1. It is a rather difficult task to find a good book for such a purpose.(そのような目的に合う良い本を見つけるのはちょっと難しい。)
  2. It is rather a difficult task to find a good book for such a purpose.(そのような目的に合う良い本を見つけるのはちょっと難しい。)

quiteは、1音節の〈形容詞〉、または強勢が第1音節にある〈形容詞〉のばあいには〈quite a~〉がふつう。強勢が後ろにある〈形容詞〉のばあいにはどちらでもよい。

  • Cleopatra was quite an interesting figure in history.(クレオパトラは歴史上まったく興味深い人物だ。)

17-1-2-3: 〈so+形容詞+a[an]+名詞〉型(as, so, how, tooなど)

  1. It was so strange a story that few people believed it.(あまりにも奇妙な話だったので、それを信じる人はほとんどいなかった。)
  2. He is as great a musician as ever lived.(彼は古来まれな大音楽家だ。)
  3. How big an apartment do you want?(どのくらいの大きさのアパートが欲しいのですか?)
  4. It's too small a hat for you.(その帽子は小さすぎて君にはかぶれないよ。)

17-1-2-4: 〈all the+(形容詞)+名詞〉型(all, both, double, twiceなど)

  1. We walked all the way.(我々はずっと歩き通しだ。)
  2. All the members of this club must attend the meeting.(このクラブの部員は全員、会議に出席しなければならない。)
  3. Both the boys shouted.(少年は2人とも大声を出した。)
  4. This book will sell for double the price in Japan.(この本は日本では2倍の価格でも売れる。)

17-1-3: 〈冠詞〉の反復

〈名詞〉が〈A and B〉や〈A or B〉といったように〈接続詞〉で結ばれているとき、〈冠詞〉の個数が問題になる。

17-1-3-1: 2つの〈名詞〉・〈形容詞〉

17-1-3-1-1: 同一のもの[人]を指すときは、最初に1つだけ
  1. He was a scholar and explorer.(彼は学者で探検家だった。)
  2. There is a red and white flower in the vase.(花瓶に紅白まだらの花が1本挿してある。)
17-1-3-1-2: 別々のもの[人]を指すときは、それぞれに
  1. The two people I met were a scholar and an explorer.(私が会った2人は、学者と探検家だった。)
  2. There are a red and a white flower in the vase.(花瓶に赤い花と白い花が1本ずつ挿してある。)

例文2について、2本の花があることを思い浮かべてflowersと〈複数形〉にしたくなるかもしれないが、これはたんに:

  • There are a red flower and a white flower in the vase.

flowerの反復を避けただけであるから、〈単数形〉でよい。

17-1-3-2: 2つで1セットになっているものは1つだけ

  1. I want to buy a cup and saucer.(受け皿付きの茶碗を買いたい。)
  2. I want to buy five cups and saucers.(受け皿付きの茶碗を5セット買いたい。)
  3. the bread and butter(バターつきパン)

17-2: 〈無冠詞〉と〈冠詞〉の省略

原則として、〈可算名詞〉の〈単数形〉には〈冠詞〉が必要である。しかし、省略されるばあいもある。試験問題として頻出であるためしっかりおさえておきたい。

17-2-1: 官職・身分・称号などを表す〈名詞〉

このケース(17-2-1-1~17-2-1-4)は、絶対的なルールではない。

17-2-1-1: 人名の前で

  • Professor Ito(伊藤教授)
  • President Bush(ブッシュ大統領)

ただし、(官職・身分・称号ではない)〈普通名詞〉のあとに〈固有名詞〉がくるばあい、〈冠詞〉が必要になるばあいもある:

  • the poet Keats(詩人キーツ)

17-2-1-2: 人名の後に〈同格〉の〈名詞〉として

  • Dr. Darling, Professor of Linguistics at Harvard University, wrote this book.(ハーバード大学の言語学教授、ダーリング博士がこの本を書いた。)

17-2-1-3: 補語として用いられるばあい

17-2-1-3-1: 〈主格補語〉
  • Tommy Lasorda was manager of the U.S. baseball team in the 2000 Olympics.(トミー・ラソーダは2000年のオリンピックで米国野球チームの監督だった。)
17-2-1-3-2: 〈目的格補語〉
  • I can't believe that they elected me presicent of the PTA.(みんなが私をPTAの会長に選んだなんて信じられない。)

17-2-1-4: 役割を表すasの次で

  • I acted as interpreter during business meetings.(私は商談の間中通訳として働いた。)

17-2-2: 建造物や場所を表す〈名詞〉

17-2-2-1: 本来の目的や機能を表す慣用句で

建造物や場所を表す〈名詞〉が、それらの持つ本来の目的や機能を〈前置詞〉ありの慣用句として表すばあいには、〈冠詞〉を用いない。試験でも頻出問題になる

  1. I usually go to bed at eleven.(私はたいてい11時に寝ます。)
  2. She spread her purchases out on the bed.(彼女は買ってきたものをベッドの上に広げた。)

bedは「寝るための」という機能・目的を備えているため、go to bedでは〈冠詞〉を用いないのに対し、spread O out on the bedでは〈冠詞〉が必要になる。

  1. We don't have to go to school on Sundays.(日曜日には学校に行かなくてよい。)
  2. In America about half of the Christian women go to church at least once a week.(米国ではクリスチャンの女性の約半数は、週に少なくとも1回は礼拝に行く。)
  3. after school(放課後)
  4. appear in court(出廷する)
  5. be at table(食事中で)
  6. be in bed(寝ている)
  7. be in class(授業中で)
  8. be in prison(服役中で)
  9. go to college(大学に通う)
  10. go to sea(船乗りになる;出帆する)

17-2-2-2: その他〈冠詞〉に注意すべき建物や場所

17-2-2-2-1: hospital(病院)
  1. be in hospital(入院中)〈英〉
  2. be in the hospital(入院中)〈米〉
17-2-2-2-2: university(大学)
  1. go to university(大学に通う)〈英〉
  2. go to college(大学に通う)〈米〉
  3. go to a university(大学に通う)〈米〉
17-2-2-2-3: town(町)
  • We drove into town to buy some food.(私たちは食料品を買いに、車で街に行った。)

話し手が住んでいる所と関係が深い場所などは〈無冠詞〉。

17-2-3: 〈by+交通・通信の手段を表す名詞〉

  1. They came to the wedding by car.(彼らは結婚式に車でやってきた。)
  2. I'll contact her by telephone.(電話で彼女に連絡します。)
  3. by air(空路で)
  4. by bicycle(自転車で)
  5. by boat(船で)
  6. by bus(バスで)
  7. by car(車で)
  8. by e-mail(Eメールで)
  9. by fax(ファックスで)
  10. by plane(空路で)
  11. by sea(海路で)
  12. by ship(船で)
  13. by subway(地下鉄で)〈米〉
  14. by telephone(電話で)
  15. by train(電車で)
  16. by tube(地下鉄で)〈英〉

ただし、乗り物を具体的に示したいときは、〈冠詞〉を省略しない:

  • Scott and I went to Chicago in an old car.(スコットと私は古い車でシカゴへ行った。)

また、交通手段としての本来の機能ではないときにも、〈冠詞〉は必要である:

  • She was run over by a bus and killed three days ago.(彼女は3日前に、バスにひかれて死んだ。)

17-2-4: 食事・科目・スポーツなどを表す〈名詞〉

  1. I have lunch at home almost every day.(私はほとんど毎日家で昼食をとっている。)
  2. Where shall we have dinner tonight?(今夜はどこで食事をしましょうか。)
  3. I like history very much.(私は歴史が大好きだ。)
  4. She is a good player of tennis.(彼女はテニスが上手だ。)

17-2-5: 特殊な構文や慣用句で

17-2-5-1: 対句

17-2-5-1-1: 〈A and B〉
  1. We are husband and wife.(私たちは夫婦です。)
  2. day and night(昼も夜も)
  3. year after year(来る年も来る年も)
17-2-5-1-2: 〈A+前置詞+A〉
  • Democratic reforms go hand in hand with economic reforms.(民主的な改革は経済的改革と密接な関係がある。)
17-2-5-1-3: 〈from A to[till] B〉
  1. They kept on living from hand to mouth.(彼らはその日暮らしを続けていた。)
  2. from door to door(1軒ごとに)

17-2-5-2: 〈kind[type] of+A〉

  • When a new type of computer is introduced, it is usually expensive.(新型のコンピューターが発売されるときはたいてい高価である。)

17-2-5-3: その他の慣用句で

この手の「〈無冠詞+名詞〉を用いた慣用表現」をあげていけば、きりがない。これは「〈不定冠詞+名詞〉を用いた慣用表現」も「〈定冠詞+名詞〉を用いた慣用表現」も同様である。『NextStage』のような「試験によく出るイディオム集」でまとめて覚えてしまうのが効率的かもしれない。もちろん理想的には、英文の読解のついでに言い回しを蓄積することが望ましい。

17-2-5-3-1: 〈他動詞+名詞〉型
  1. Americans will never forget the series of events that took place on the morning of Sept. 11, 2001.(米国人は2001年9月11日の朝起きた一連の出来事を決して忘れないだろう。)
  2. beg pardon(許しを請う)
  3. give way(崩れ倒れる)
  4. lose sight of(見失う)
  5. send word(伝言する)
  6. set sail(出帆する)
  7. take care of(世話する)
  8. take part in(参加する)
17-2-5-3-2: 〈前置詞+名詞〉型
  1. She learned that poem by heart at school.(彼女は学校でその詩を暗記した。)
  2. at heart(心の底では)
  3. at noon(正午に)
  4. by accident(偶然に)
  5. by chance(偶然に)
  6. by name(名前で/名指しで)※She knows all her students by name.(彼女は生徒の名前を全員知っている。)
  7. by profession(職業は)
  8. by trade(職業は、商売は)
  9. for example(たとえば)
  10. in fact(じっさい)
  11. of opinion(意見上で)
  12. on hand(手元に)
  13. under sail(帆走中で)
17-2-5-3-3: 〈前置詞+名詞+前置詞〉型
  1. In (the) course of time there was a need to train computer professionals.(やがてコンピューターの専門家を育てる必要が出てきた。)※theを用いるばあいもある。
  2. by means of(~により)※byの強調と考えてよい。
  3. by reason of(~のゆえに)
  4. by way of(~経由で)
  5. in terror of(~を恐れて)
  6. in respect of(~の点において)
  7. on behalf of(~のために/~を代表して)

behalfは、

  • on behalf of A
  • = on A's behalf

の熟語でしか使われない特殊な〈名詞〉である。